• 【柏原6・7丁目町内会】電子回覧板を導入

    2024-09-11

    福岡市南区柏原校区の柏原6・7丁目町内会(約830世帯、人口約1,900人)は、令和6年6月にLINE公式アカウントとホームページを組み合わせた電子回覧板を開始しました。


    この新たな回覧板を導入したいきさつと実際の運用について、この町内会の石田亘会長、征矢(そや)真紀事務局長、ホームページとLINE担当の石田和子さん、そして柏原校区自治協議会の安藤千津代会長にお話を伺いました。


    電子回覧板導入のいきさつについて



    Q. 電子回覧板を始めた『きっかけ』は?


    【石田会長】昨年まで私は自治協議会の副会長と防災会長をしていました。それらの活動をする中で、デジタルでの住民の繋がりやホームページなど「電子化」の重要性を実感しました。


    その理由の1つが、回覧用に印刷していたコピー機の使用実態です。毎月のようにコピー機がフル回転で大量に印刷をするのですが、読んだ後は刷った紙を捨ててしまいます。だから、お金、紙資源、時間が無駄になっていると思いました。「皆が大変だからこのやり方をやめよう」と提案しても、皆ボランティアでやっているという事情もあり、結局「いい話」で済まされてしまい、もどかしさを感じていました。


    若手はデジタルが便利だと思うけれど、高齢者は紙で情報を欲しいんですよね。自分も年をとって小さい文字が見づらくなってきたら、大きく印刷された紙で欲しいと思うんです。


    紙かデジタルかの線引きをどうするか検討しましたが、「難しいからやめよう」ということになり、また、防災会長もやめようと思った矢先に町内会長をして欲しいという話がきました。


    自分には仕事もあるし、プライベートの時間を使って会長として活動するのは正直キツイので最初はお断りしていました。それでも是非引き受けて欲しいということなので会長選考委員会の場で「自分が会長を引き受ける条件として電子回覧板を始めます。それでよければやります」と言いました。後でわかったのですが、実は高齢者の方々も、電子化する必要があるだろうと思っていたそうです。


    なぜかというと高齢者が回覧板を回す重労働を担っている状況が起きているからです。住民がどんどん高齢化していく中、重い紙の束を持ち帰り、整理して回す準備をして、配布するのが大変という話をよく聞きます。紙の量を極力減らして必要な分だけを配布できたらという思いで電子回覧板を始めました。


    一番大切なのは人同士の繋がりです。デジタルなら投票機能やアンケートで、小さな意見を拾うこともできます。


    ただ、問い合わせフォームは、責任を持って意見していただくために匿名を受け付けていません。その意見で町内会が動くことになりますから、意見する人はちゃんと名乗ってください、そうすれば、ちゃんとお答えいたします、というルールを作りました。高齢の方、若い方の意見もリスペクトできるように皆さんで仕組みを作っていきたいと思います。



    Q.  LINE公式アカウント以外のツールも比較検討されましたか?


    【石田会長】サークルスクエアも検討しましたが、新しいアプリをインストールしてもらう手間がかかります。LINE公式アカウントは、福岡市が市民向けサービスを提供していることもあり、高齢者の方もLINEなら既に使っているという方が多くいらっしゃいます。新しく操作を覚える必要もないので浸透性が高いです。若い方ならLINEオープンチャットもいいかもしれませんが、わからない、使えないという人が出ないよう、LINE公式アカウントにしました。リサーチ(投票)が使えるのも便利ですね。



    Q. ホームページとも連動されていますが、運営体制は?



    【石田会長】柏原校区の柏原6・7丁目町内会の役員は、5名(会長、副会長2名、事務局長、会計)で構成されています。ホームページは知人に頼んでWIXというホームページ作成サービスを使って作成してもらいました。


    【征矢さん】配布物に関しては、私が公民館から受取って、表書きを作成し、広報委員の所へ持っていき、組ごとに仕分けし、配布を頼んでいます。両手いっぱいに紙袋を抱えるほど、毎月たくさんの広報物が届きます。まずは広報紙を組ごとに仕分けしていく作業から始めます。


    【石田和子さん】征矢さんのセッティングができた時点で、配布物を受け取り、スキャナで読み取り、画像化してホームページに掲載し、LINEでお知らせして、ホームページを見ていただきます。

    LINE公式アカウントでのやり取りは、昨年、柏原6・7丁目の子育連(子ども会育成連合会)で、お子さんのいる120世帯に向けて広報を行った経験が役に立っています。



    Q. 予算について教えてください


    【石田会長】現在、開始から2か月目で、登録者は183件です。今のところLINE公式アカウントは5,000通(月5,000円)のプランで充分間に合っていますが、予算的には30,000通(月15,000円)分を確保しています。ランニングコストのほか、ホームページの充実化を図り、これから住民が増えた時にも対応できるよう、20万円を予算化しました。


    無駄な予算を削ることから始めましたが「今までずっとこれでやって来た」という反対意見もかなり多くありました。ただ細かく見直すとたくさん無駄遣いがあるんですよね。歴代の役員が確保してきた予算ということで気持ちはよくわかりますが、不要なものにメスを入れないと町内も変わらない。文句を言われても変えるべきところは変えて、今、本当に必要なことに予算を使えるようにすることが重要です。そこが一番難しいと思います。



    電子回覧板の運用について


    Q. 電子回覧板の内容は?


    【石田和子さん】町内会報告、自治協からのお知らせ、各種団体、小中学校の学校通信、警察や市からの配布物など紙の回覧板で回す内容はすべて掲載しています。そのほか、資源回収の前日にお知らせを送信することもあります。


    【石田会長】例えば、体育振興委員の運動会のお知らせ、社会福祉協議会の子供カフェ、ふれあい食堂、制服のリユースなど、各部会から連絡があれば、その都度アップし、印刷物も町内のボックスに入れています。知る機会をいっぱい持ってもらうためにも、より多く発信していきたいです。



    Q. 電子回覧板と紙回覧板との併用はどうされていますか?


    【征矢さん】現在は、電子回覧板に加入している方にも紙の回覧板を回しています。


    【石田会長】紙の回覧板をやめる予定は今のところありません。町内の方全員を支えていかないといけないので、デジタルだけにはしないと割り切って、紙の回覧板と併用していく予定です。取り残される人を出さないためにもアナログは大事です。


    【征矢さん】年代だけじゃないですよね。80代でも興味があって、調べたり習って使いこなしている人もいれば、若い方でも不得意な方がいらっしゃいます。


    【石田会長】マンションはエレベーターの前などに掲示できますが、街の掲示板はそこを通る人しか見ることができません。もし先々、殆どの方が電子回覧板の方を利用するようになったら、最終的には紙の回覧板をやめて希望者だけに紙をポスティングするのが目標です。



    Q. 「紙」と「デジタル」を併用するうえで、大変な点は?


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    【征矢さん】町内に31組ありますが、そのうち8組は約40世帯あり、それぞれ回覧板を2つずつ回しているので、その分コピーして仕分けしてと、「紙」の作業はとても大変です。先々LINE中心になって紙の量が減るだけでも、かなり楽になると思います。


    【石田和子さん】デジタル化に関しては、見開き両面(計4面)のチラシは、スキャンして画像化して順番に並べるだけでもかなり手間がかかります。空白ができてしまうので修正を要したり、画像が粗くなって見づらいという失敗もよくあります。


    スキャナなどの機材がない町内会もあると思いますし、チラシのデータはホームページなどで、まとめてダウンロードできるようにしてもらえれば、きれいなデータを見てもらえますし、手間もかなり減るので助かります。


    各種団体の資料もパソコンで作成していますが、データを送ってくれる団体は少ないです。電子回覧板に掲載することを周知し、データが集まってくるようにできたらいいですね。


    【石田会長】平等性を考えると、紙の回覧板や、皆が毎日通っているスーパーにデジタルサイネージを置いてもらえれば、地域住民のためになるのではないかと考えています。

    紙のコストは年間すごい金額になっています。コストと手間を省けば、より大きな事業ができる可能性も高くなります。



    Q. 電子回覧板への加入者を増やすために、どのような工夫をされましたか?

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    【征矢さん】回覧板にチラシを入れたほか、掲示板にも大きく印刷したチラシを掲載しました。

    組長さんによっては毎回の回覧板で回していただいていますが、1回だけのところもあると思います。ラミネート加工して回覧板を開けたらすぐに見える所に貼ってくださいとお願いすればよかったですね。


    【石田会長】はじめは電子回覧板の利用者が一気に増えましたが、ここからはさらに頑張らないといけません。夏祭りで受付にチラシを置いて呼びかけを行うほか、一斉清掃の時は皆さんと集まって話せる時間があるので、感想も聞いてみようと考えています。



    Q. オンラインでのやり取りはどうですか?


    【石田和子さん】今は担当者が少なく手が回らないので、LINE公式アカウントのチャット機能はオフにしています。一度だけオンにしたら「LINE開設おめでとうございます」というメッセージが1通来ていました。


    【石田会長】参加申し込みなどもGoogleフォームで受付を予定していますが、会長に就任してまだ2か月なので少しずつ進め、来年頃からテストしようと考えています。QRコードを読み取りGoogleフォームを開いて回答してもらい、紙に書きたい人は従来通り紙で提出していただくのがいいと思います。集計が大変になるかもしれませんが。


    【石田和子さん】子育連の時は、全員が登録していたので「運動会の何の種目に出ますか?第2希望まで入れてください」という集計はとてもスムーズでした。

    ただ町内の全員が対象となると様々な方がいらっしゃいますし、参加人数が増える夏祭りなどは、重複した人を照らし合わせるなど集計が難しくなりそうです。「紙」と「デジタル」の両方でやるのは大変ですが、変わるには時間がかかりますからね。



    デジタル化の効果などについて


    Q. 住民の方からの反応はいかがですか?


    【石田会長】令和6年6月末に始めて、2か月で183名の登録がありました。これだけの方が町内会の活動に興味を持ってくれているんですね。


    【石田和子さん】電子回覧板なら、急いで次に回さないといけない焦りも手間もなく、電子化されることで後からゆっくり見直すこともできて便利ですね、と声をかけていただくことがあります。


    そのほか、資源ごみについて掲載依頼があったため、資源ごみ出しの2~3日前にLINEで『地ビールのビンは回収できないので出さないでください』という内容をお知らせしたところ、後日『お知らせのおかげで地ビールのビンは出てなかったよ』と報告をいただきました。


    紙の回覧板だと次の月まで待たないといけませんし、全員が回覧するまでに1~2週間の情報のズレが起きます。タイムラグがなく即情報を伝えられるところは電子回覧板の大きなメリットですね。


    1726027870.8825.jpg【自治協議会安藤会長】若い人たちと話すと、彼らは電子回覧板をよく見ているようです。私も、75歳の役員の方も、紙の回覧板を回してしまって手元にない資料を見直す時に使っています。情報を確認するときにLINEでパッと見ることができるのは便利ですね。


    せっかく良いものがあっても分からない、知らないという方がたくさんいらっしゃいます。画面が小さくて見づらいという高齢者の中には、スマートフォンの画面を指で広げれば拡大できるということを知らずに使っている方も多いです。


    便利なものがあるよ、このボタンだけ押せば見られますよ、ということを伝え、やり方がわからない高齢者の方には、敬老祝賀会などの場で、ちょっとした機会を設けて教えたらデジタル化が広がるのではないかと思います。それによって、いろんな人が地域に少しでも興味を持ってもらえたら良いですね。


    【石田会長】お父さん、お母さんの世代は忙しい方が多いので、例えば回覧板で「夏祭りがある」ということは分かっても詳細な情報までは覚えられませんが、電子化されることで日時や場所を再確認することができます。LINEは日常的に使っている方が多いので、新着メッセージが届いたら一覧の上に表示されるので気軽に見ることができるのもメリットです。



    Q. やってみて感じた問題点やデメリットはありますか?


    【石田和子さん】ホームページは修正できますが、LINEは投稿後に修正できません。間違うとお詫びの配信でLINEのメッセージ通数を消費することになるので、発信前の確認はしっかりと行う必要があります。LINEの配信が一番気を使います。


    LINE公式アカウントだと登録人数しか把握できないので、昨年まで全員参加されていた子育連の方がどれくらい登録しているのかも把握できていません。


    【石田会長】デジタルでの情報発信は早くて確実でとても便利です。ただ、オンラインや文字での議論は、ちょっとした語尾のニュアンスを見逃すなどトラブルになりやすいので、会って話すことの大切さも実感しています。デジタルを活用しながら、最終的にはアナログで住民の方々と組長達の繋がりができるように努力が必要だと思います。



    Q. 登録された方の利用状況はいかがですか?


    【石田和子さん】結構見られていますよ。管理画面のデータを見ると、170件登録された時、開封が153件、メッセージのクリックが57(37%)です。クリック率に関しては、リッチメニュー(LINE公式アカウントのトーク画面下部に表示されるメニュー)を工夫しているので、メッセージではなくメニューのボタンをクリックして回覧板を見る人も多いと思います。今の登録者は、LINE開設後すぐに登録する意識の高い方が多いのかもしれません。



    電子回覧板の今後について


    Q. 組織の拡大も検討されているとのことですが?


    【石田会長】町内会は数千人が関わるので、公平性を向上させるためにも、役員を9人または11人位に増員するなど、IT化以外にも、区役所と相談しながら、今後の町内会のあり方としてふさわしい組織、役員構成を考えたいと思っています。


    依頼されたチラシを配布することが広報の仕事になっていますが、町内の案内や祭りのチラシを作ったり、文章を考えたり、情報をまとめる人が必要です。


    【石田和子さん】みなさんに話を聞くと、例えば家でできることなら、少しだけなら協力したいという人は意外と多いです。それぞれできることを分担・協力してできるようになるといいですね。


    【石田会長】現在はチラシの配布も負担になっていますが、シニアクラブの活動や、高齢者の散歩のついで、あるいは子どものちょっとしたアルバイトとして、有料でポスティングを依頼することも考えています。


    【征矢さん】いろいろな方がこの取り組みに関われるよう、1年やってみた後、どのような事業があるか、いつ何を準備すればいいかなど、すべてマニュアル化する予定です。



    Q. 今後の目標はありますか?


    【石田会長】全国的にも有名な名古屋の上志段味(かみしだみ)自治会に話を伺ったところ、全世帯数の約4割が登録されていると聞きました。柏原6・7丁目町内会は約830世帯あり、現在の登録者が183件なので目標の半分を2か月で超えたことになります。


    開始して2か月なので、反応はこれから少しずつテストして確かめていく予定です。9月頃からアンケートを実施して状況把握を行い、紙の量を減らせないか検討していきたいです。

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    福岡市の「共創による地域コミュニティ活性化条例」はありますが、町内会のお知らせに活用しているところは少なく、住民の中にも町内会に興味がない、なくても困らないという方が増えています。町内会は、あくまでも任意加入ですが、災害が起きた時などは、皆で避難したり、助け合ったり、協調して動く必要があります。そのための町内会ですので、組織の趣旨をご理解いただいた上で入ってくださいと呼びかけながら、町内会への加入と、電子回覧板の利用をゆっくり進めていきたいと考えています。



    イベント情報や詳しい活動などは、柏原6・7丁目町内会ホームページでご覧いただけます。